月夜のメティエ
「朱理、寝てばかり居ないでさぁ、買い物行ってきてくれない? おせち飽きたでしょう」
こたつに寝ころんで正月番組を観ているあたしに、お母さんがそう言ってきた。お父さんだって寝てるけど。昼間から呑んで寝てるじゃないか……。
「あんた、クリスマスと正月を一緒に過ごす彼氏の1人くらい作りなさいよ~」
「ほっといて……」
実家を出ていて、いい歳の独身女が親から言われる台詞ベスト5に入りそうなことを言うお母さん。作らないわけじゃないわ、別に。
5歳離れた弟は、友達と新年会だって。まだ実家に居るけれど、お金貯めたら出るとか言ってる。貯まるのはいつでしょうか。
あたしはのそのそと起き上がり「何買ってこようか」とお母さんにく。「好きなもの買ってらっしゃい」と言われた。こたつの上にはお金とエコバッグ。明日で正月休みも終わる。少し歩いて、頭をすっきりさせるのも良いかもしれない。お父さんはひっくり返って寝ていた。
玄関を出ると、道が真っ白になっていた。10cmくらい積もったのかな。ブーツじゃないとだめだね、これは。持ってきて正解。ヒールのあるのと、ぺたんこのムートンブーツを持って実家に帰ってきた。ムートンの方が断然歩きやすいから、それを履いて出てきた。別に買い物に行くだけだし。
時間は14時すぎ。とは言っても、冬場は暗くなるのが早い。うっかりしてるとすぐに真っ暗になる。現に、もうなんだか少し陽の光に色が付いている。
寒いなぁ。でもちょっと歩いて来ようかなぁ。肩を縮めて歩く。歩くのは意外と好き。散歩も。
正月休みに実家に帰ってきて、休み最終日まで家から出ない、なんてこともある。なんかそれも勿体ないよね。
気分転換。窒息しそうな脳みその、空気の入れ換え。こんな風にして、夜に家を出たこともあったなぁ。
コンビニまで徒歩15分。スーパーまでは徒歩だともうちょっとかかるか。それならば、中学校まで行ってみようかな。当時を思い出して……なんてね。