sweet memory ~奏大side~
それから淳平の親父さんが来て、花菜の様子を見てくれていたが、その記憶はなく、ただ呆然とその光景を眺めているだけだった。
それから、俺たちは廊下へと出た。
「花菜ちん…奏大と俺の記憶がすっぽり抜け落ちちゃってるんだな」
「あぁ…」
「ごめん、奏大の留学前にこんなことになっちまって…」
「いや…こればかりは仕方ないだろう…」
「これからどうする?花菜ちんがあの調子じゃ、たぶん記憶を取り戻すまでに時間がかかると思うぜ?」
「……仕方ない。俺はこのまま留学をする」
「奏大」
「お前、正気か?このまま花菜ちんと離れたら…」
「わかっている。だけど、これ以上の花菜に辛い思いをさせたくはない。花菜が俺たちの記憶を消してしまったのは、それ程花菜にとって嫌な出来事だったんだ。あんな表情をさせるくらいなら、しばらく会わない方が良い」
「けど、それで花菜が思い出すとは限らないぞ?!いいのかよ!」
この時、創が珍しく怒鳴っていたんだ。
普段怒りを露わにしない創だったから驚いた。
けれど、俺は考えを変えなかった。