レンタル彼氏【完全版】
「好きなんだっ」



………


好きな気持ちだけ、伝えたかったんだ。



「…………」


一世一代の告白。
人生初の告白だった。


伊織は黙ったまま、私を見つめる。
毎回思うけど、伊織は本当に顔に感情がほとんど表れない。

出るのは嫌悪感だけ。



「……泉」


「うん」


「もう忘れた?」


「え?」


「注意事項」


「……は?」



伊織が何を言ってるのか意味がわからなかった。


伊織の眉が情けなく下がってゆく。




伊織は少し間を置きながら、髪の毛をタオルでわしゃわしゃと拭いた。


髪の毛から雫が飛んできて、ピチピチ当たる。





拭いたタオルをベッド脇に置くと、伊織は洋服を着た。
衣服を着た伊織はルームキーを持って、外へ出る準備をしている。
全く以て伊織の行動が理解出来ない私は黙って見ていた。


「ちょ、ちょっと、帰るの?!」


私が伊織に言うと、伊織は明らかな嫌悪感を露にした。




「契約破棄」


一言。
伊織が言った。
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