レンタル彼氏【完全版】
「けーやく…はき?」

その意味を理解できない。

ぼんやりと繰り返すと、伊織がまた強く。

「け・い・や・く・は・き!」

そしてはっきりと言った。


「安心して、ここの代金ぐらい支払うから」



また無表情で、伊織はそれだけ言うと


「…洋服着て?」


真っ直ぐ私を見ていた。


伊織の言葉は耳から耳を素通りしていた。



意味が全くわからない。
代金なんて考えてなかった。

そんなこと知りたいわけじゃない。



私は脳内の記憶に意識を巡らせる。


………




「あ…」





パソコンで見てた時の注意事項。



レンタル彼氏には恋愛感情を持たないように。


そうだ。



好きになってはいけなかったんだ。
思い出した。



「……理解した?」


伊織に言われた通り、しっかり状況を理解した私は衣服にとりあえず袖を通した。
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