レンタル彼氏【完全版】
着替えたのを確認してから、伊織は無言で扉に向かう。


ドアノブに手をかけた時、私はいてもたってもいられなくて声をかけた。



「もうっ」


緊張して声が震えてる。
でも、今聞かないと。



「もう、会えないの?」


聞きたかったこと。


わかってた。
注意事項通りなら。


だけど。
淡い僅かな希望を信じて。



伊織に聞いたんだ。



「…言ったでしょ、契約破棄って」



伊織はまた情けなく眉を下げて言った。
こんな時でも伊織はかっこいい。
悔しいほどに。


「……」


もう、ここを出たら赤の他人にならなくちゃいけない。
そんなの…。



そんなの無理!



無理!
無理だよ!伊織!


私、好きだもん!
伊織が好きだって気付いちゃったんだもん!



伊織のメールに一喜一憂してる私が、伊織を簡単に忘れられるわけないよ。
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