レンタル彼氏【完全版】
「俺さ、親いないんだよね」


「えっ?」


「小さい時に捨てられたから、施設育ちで。
新しい親に引き取られても素直に甘えらんない苛立ちが募ってた。
年誤魔化してキャバクラのボーイして、金稼いで、キャバクラ嬢抱いてた」


そこまで一気に言うと、伊織は黙って私を見る。
私はあまりにも私とは違いすぎる境遇に頭が追い付いてなかった。


「俺、いつも空っぽだったんだよ」


そっと私の頬に手を添える。
その手は微かに震えていて冷たかった。


その切なげに微笑む顔に、胸がきゅうきゅう痛くなる。


「伊織…」
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