レンタル彼氏【完全版】
伊織が連れてきたのは、前に行ったラブホテル。

え…?
いきなり…ラブホ?


その間、伊織は一言も話さなかった。

部屋を選んで、鍵を受け取ると沈黙のまま、エレベーターに乗り込んだ。
私の腕を掴んだまま。


「…伊織?」


「…………」


伊織は私を見ようともしなかった。


ただ、真っ直ぐ、虚ろに前を見ているだけ。

エレベーターの扉を見ているんじゃない。
ただ、前を見ていた。


…伊織?


部屋に入ると、伊織はやっと私の腕を離してくれた。
それから伊織は鍵をかけると、また何も言わずに部屋の中に進んだ。


何で…何も言わないの?
私、このまま抱かれるの?


伊織、私って何?
伊織の何なの?


伊織がわからないよ。


「…こっち、来いよ」


やっと、伊織が言葉を発したけどその声は低くて。
…何か怒ってる?


何で?
怒ってんのは私だ。

連絡が急に途絶えたと思ったら、何もなかったかのようなメールしてきて。


だけど、逆らうことも出来ず、私は素直に伊織の隣へと歩いた。
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