レンタル彼氏【完全版】
ベッドに腰掛ける伊織の前に立つと、伊織は私を見上げた。


「……泉」


「…何?」


「泉は俺の、モンだよな?」


「…え?」


「俺の、モンなんだよな?」


「…いきなり、どうしたの?」


「答えろよ!!!」


急に声を張り上げた伊織に、肩がびくっとなる。


固まった私を見る伊織の瞳は、鋭くて。
これは睨んでるのかな…。


「…伊織、のモノだよ」

恐る恐る答えると、伊織から表情が消えた。


「………………せに」


「え?」


何か、ぼそっと伊織が呟いた。
聞こえなくて、尋ねると伊織が私の腕を引っ張ってベッドに押し倒した。





「楽しそうに男と歩いてたくせに!!!!」


強く、肩を掴まれて。


そんな伊織の瞳はゆらゆらと、揺れていた。


不安、憤り、淋しさ、孤独。
感じたことない感情が伊織を駆け巡っていて。



見上げた伊織の頬にそっと手を伸ばす。
びくっと体が怯む。


「…私、伊織だけだよ?」


真っ直ぐに伊織の目を、瞳を見て呟いた。
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