レンタル彼氏【完全版】
二人で並んで歩く。
長い沈黙が流れた。
何か話をした方がいいのか、模索してると急に母親が立ち止まりしゃがみこんだ。
「えっ!?」
驚いて、母親を凝視すると肩を震わせていた。
「………伊織、ごめんね…ごめんね……伊織」
ずっと。
ずっと。
俺への謝罪の言葉を繰り返し呟いては、涙を流した。
そんな母親の前にしゃがんで、母親の肩に手を置いた。
「……もう、怒ってない。
だから…帰ろう?」
顔を上げた母親は、俺を見て更に嗚咽を洩らした。
そして、俺を抱き寄せた。
強く。
強く…。
……安心する。
母親の温もりをひしひしと感じながら、俺は一筋の涙を流した。
何で泣いたのか。
わからない。
俺。
生きててよかったんだね。
いらなかったんじゃないよね。
声に出したら。
壊れてしまいそうな疑問を母親に心の中で何度も何度も…投げ掛けた。