レンタル彼氏【完全版】
やっとのことで一歩踏み出すと、そこからは雪崩のように机の前に崩れ落ちた。


心臓がドクンドクンと変な音を立てている。



たかが、携帯。

なのに、触ることが憚られて。



これを受け取ったら。
もう、伊織とは本当に終わりな気がして。



自然と、頬を涙が伝った。


お金、こんなにいらない。
微量ながらもお金は持ってきた。


何回か行って、大体の値段は覚えてた。


毎回、伊織が出してくれたけど…。



でも…こんな、余るほどのお金いらない。



私は、逆に貴方に支払おうと思ってたんだよ…?

支払いをしてくれてることが、客と彼女との違いだってわからせるのに充分で幸せだったのに。




どこでボタンを掛け違えたんだろう。



泣きそうな伊織を、私は包んであげることが出来なかった。


悔しい、悔しいよ、伊織。


嵐のように突然現れたと思ったら、同じように突然去るだなんて…。


勝手すぎる。
勝手すぎるよ。
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