レンタル彼氏【完全版】
とぼとぼと、家路までの道を歩く。


私のカバンの中には、伊織の携帯と乱雑に置かれていたお金。



携帯で伊織の連絡先を見つめても。
もう、これが伊織に通じることはない。


携帯なんか、意味がない。
持ってたって意味がない。


伊織に通じないと。



家の玄関を開けると、直ぐ様母親が走り寄ってきた。
その慌てた様子に何事かと思う。


「ちょっと、泉!どこ行ってたの!あんた、学校休んだのに!」


「………」

そうか。
私今日学校休んでたんだ。

そりゃお母さん、部屋にいなければ吃驚するよね。

そう、思っていると…。


「和ちゃんと、男の子、来てるわよ」


「え?」


和と、男の子…?
それが順二だなんて、部屋に行かなくてもわかる。


扉を壊す勢いで開けた私は、二人に泣き叫んでいた。
二人に怒鳴るなんて、絶対間違ってんのに。


二人は私のことを、心底思ってくれてるだけなのに。



「今すぐ、帰って!
二人がっ、二人がいなきゃ!伊織とさよならすることもなかった!」



きょとんとした顔で二人は私を見つめる。
だけど、私は止まらない。
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