レンタル彼氏【完全版】
「あの日、順二と帰らなければっ」


わかってる。


「和が一緒にいればっ」


わかってんの。


「伊織はいなくならなかったのにぃ………!」


そのまま、膝をついて泣き崩れる私を和は黙って抱きしめる。



「………何があったか、聞いていい?」


今まで、和は何があったのか無理に聞き出さなかった。
きっと、わかってたはず。

私が一人で悩み、苦しんでたことも。


八つ当たりだって、わかってるよ。


「ごめん、ごめんね…」


支離滅裂な私の言葉を、うんうんと頷いて和は宥める。


「……男と…別れたのか?」


黙ったままの順二が、ぽつりと呟く。



「……………別れた…」



泣きながら。


口にしたくなかった言葉を吐き出す。


口にしたら。
現実になりそうで。



本当に。
伊織は私の元からいなくなったんだって。


嫌でも突き付けられる。
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