レンタル彼氏【完全版】
私って…、こんな人の気持ち考えらんない奴だったっけ…。
悔しくて、思わず顔が歪む。
「…泉さ、最近…ずっとずっと、ここ。
寄ってたじゃん」
そうやって、和が私の眉間に指を当てた。
いつかも、そうやって、私の眉間に指を当ててくれたことを思い出す。
「…付き合うってさ、お互いが幸せになる為じゃないの?
泉は、その彼と付き合って幸せだったの?」
「………」
何で、はっきりと言えないんだろう。
伊織と付き合えて幸せだった。
幸せだったのに。
付き合ってる時は、毎日が不安で不安でたまらなくて。
連絡をマメに寄越す人ではないから、余計不安で。
私は彼に釣り合わないんじゃないかって。
隣に並ぶ度。
すれ違う女の子が、伊織のことを噂する度。
どこが、どこを。
私のどこが、どこを。
好きなんだろうって。
恥じらう、その顔も伊織の演技なのかって。
結局、信用してなかったのは私。
信じたくて、信じたくて。
なのに。