レンタル彼氏【完全版】
美佳はタイミングいいんだか、悪いんだか、よく分からない。



エレベーターに入って一階を押すと、俺は壁に寄りかかった。


なんか…疲れた。
何もしてないのに。


すぐにエレベーターの扉が開き、到着を知らせる。
早いな、なんて思いながら遠くに見える美佳の車に真っ直ぐに歩いた。


何も言わず、助手席に乗り込むと美佳が

「じゃあ、行くよー」

そう言いながら車を発進させた。


「……どこ行くの?」


「ご飯」

簡潔に真っ直ぐ前を見ながら美佳が答えた。


「……だから、どこ?」


「ごーはーんは、ご飯っ!」


「………………」

何度聞いても同じだから聞くのを諦めて、俺は座席にもたれた。


「伊織さーなんか欲しいもんないの?」


「…ない」


「いや、あるでしょ、なんか。
あーでも金で買えるのだったらないか」


「……………」





ある。


本当に狂おしいほど欲しいモノ。


だけど、二度と手に入らない。



「私はさ~昨日新作のワンピース欲しくてさー」

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