レンタル彼氏【完全版】
あれだけなりたいと思ってたジャーナリスト。

それを投げ出してでも、やりたいと思ったのが。


児童指導員。


児童養護施設、親族がいない子供や、虐待などにあった子を引き取る施設。

伊織がいたような、施設。


伊織は私を温かいと言ってくれた。
そんな私に惹かれたって。


それならば、私のその温かさで孤独な子供達を包んであげられないだろうか。



そう、思ったんだ。

だけど、それもまだ漠然と考えていただけで。


決意したきっかけになったのは、ある施設だった。



その日は和が風邪で休んだから、お見舞いに行こうと自転車を走らせていた。
和の家まで、音楽を聞きながら向かっていると。


急に目の前にボールが飛び出してきた。


慌ててブレーキを握りしめて、どうにか当たらずに済んだ。


「こらっ、誰っ!?」


咄嗟にボールが来た方を向く。


そこにあったのは

たんぽぽ院

と書かれていた児童養護施設だった。
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