レンタル彼氏【完全版】
「ごめんなさいっ」

パタパタとこっちに走り寄る一人の女の人。

その後ろに小さくなっている男の子がいた。
多分、この子が投げたりしたんだろう。

その女の人は愛想よく笑いながら

「当たらなかったかしら？ごめんなさい、この子が蹴っちゃって」

そうやって、口元に手を置きながら私に言った。
後ろにいた男の子が、びくびくしながら私に

「ごめんなさい」

と言った。


全く当たってなかったことと、まさか大人が出てくると思ってなかったことで少し動揺しながら返事をした。

「いえ、大丈夫です。当たらなかったんで！
大丈夫だよ、僕。偉いね、ちゃんと謝ること出来るんだ」

そうやって、男の子に微笑むと男の子は安心したのかにっこりと笑顔を見せた。

それに女の人が続ける。


「本当！よかった！本当にごめんなさい。気を付けさせるから」


「いえっ」


その女の人は帰り際、またこっちを振り向いて会釈をするとまた子供達と遊んでいた。


ぽけーっとその光景を見ていたけど、和のとこ行くんだった！と思い出した私は、また自転車を走らせた。


ペダルを漕いでる最中。
ずっと、たんぽぽ院のことが頭から離れなかった。



多分、ああいうとこに伊織はいたんだろうな。



それにあの女の人、凄い優しそうだった。
なんか、お母さんみたいな温かさ持ってたなあ。
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