レンタル彼氏【完全版】
たんぽぽ院に行ってみよう!
児童養護施設なんて、他にもあるかもしれない。
だけど、最初に思ってから出来たらここで働きたいってずっと思っていた。
そうと決めてからの行動力は、記者になりたかったこともありとても早かった。
すぐに準備をして、家を飛び出して自転車を走らせた。
和と私の家は反対方向だから、普通にたんぽぽ院を通るなんてことはない。
あの日、ボールが飛んでこなければきっとたんぽぽ院の存在にすら気付かなかったと思う。
今まで気付かなかったんだから。
自転車をしばらく走らせて、ようやくたんぽぽ院が見えてきた。
近くに行くと、子供達の無邪気な声がする。
たんぽぽ院の前に自転車を止めると、中へと緊張しながら足を踏み入れた。
遊んでいた子供達が、私に気付いて声をかけてくる。
「お姉ちゃん、だあれー?」
「あっ、えと、あのー」
「まあまに言わないとー」
「まあま?」
「うん、まあま」
口を揃えて言う子供達の前にしゃがみこむ。
目線を合わせて笑いかける。
「まあま、どこにいる?」
「まあま、すぐ来るよー」