レンタル彼氏【完全版】
駄々をこねる男の子に、鈴恵さんはまた優しく微笑む。


「ふふ、わかった。
ちゃんとご飯も食べようね?」


「はーい!!」


「あっ、私そろそろ帰ります」


忙しいのに、邪魔をしてしまったと思った私は会話を切って言った。


「あら、もう帰るの?」


「はい、帰って勉強しないとなんで…」


「そう…、またいつでも来てちょうだいね?」


「はい!」


「じゃあ、皆でお姉さんお見送りしよっか!」


その鈴恵さんの声に、皆が声を揃えた。
私はたくさんの子供達に手を振られて、見送ってもらった。



笑顔でさよならしたけど、自宅まで自転車を走らせている間中ずっと悶々としていた。




「……………可哀想じゃない…か」


私は誰にも聞こえない声でぽつりと呟いた。
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