レンタル彼氏【完全版】
それが、今まで付き合った彼のことだったり。

伊織のことだったり。
順二のことだったり。

和との別れとか。
クラスメイトとか。



切なくも…忘れていくのだろうか。



卒業式は何事もなく終わり、胸に花をつけた和が私の元へと走ってくる。


「和、泣いてたでしょ」

茶化すように私が言うと、ムッとしながら和が言う。


「そんなこと言って泉は?」


「私?私は泣いてないよー」


本当は和が泣いてて、つられちゃったんだけど。

それは内緒。



に、したかったのに。



「こいつ、泣いてたよ」

急に声がして、私はばっと振り向いた。


そこにいたのは順二だった。


………今まで、一切口聞いてくれなかったのに。




「こいつ、ずっと泣いてたよ。
まあ、和より酷かった」


「は、はあ!?そんな泣いてないし!」

順二にそう言ってからはっとする。
和に目をやると、私をじとーっと目を細くして見ていた。


「やっぱ泣いてたんじゃんか」


「うっ…」

和のそれに言葉が詰まる。

「何で嘘つく意味わからないー!くすぐってやるー!」


「きゃははは!まじ、やめて~!!」

和が意地悪い顔で笑うと私の弱点の脇腹を両手でくすぐった。
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