レンタル彼氏【完全版】
何も言わず、私を引っ張ると順二は屋上前の踊り場に私を連れてきた。


到着すると、ようやく順二は腕を離した。
捕まれた場所が、じんじんと熱い。


いきなりの順二の行動に私は高鳴る胸を抑えた。


ここまで連れて来たのに、中々順二は口を開こうとしない。
思い詰めたように、押し黙っている。



何か言おうかと私が口を開きかけた時。



「……合格、おめでとう」

ボソッと順二が言った。


「………ありがとう」


「……………」


「………………あ、順二も大学行くんでしょ?」


「ああ」


「頑張ろうね」


「ああ」


「……………」


順二が言いたいことってこれ?
そんならさっき、教室で言ってもよかったのではないだろうか…。


また、そうやって思った時。


「………泉…。
俺」


「…え?」


順二が俯いていた顔を上げ、しっかり私と視線を交えて言った。


「やっぱり、泉が忘れらんねえ!」


「…!!!」




真剣な…告白。


こっちが本題だったんだと、また後で気付く私は本当に鈍感だ。
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