レンタル彼氏【完全版】
「まあ、会ったことないけどね」


「え?」


聖は遠くを見ながらそう言った。


「17で出来ちゃった結婚だったから、家から縁切られてさ」


「………」


「でも母親は俺にたくさんの愛情を注いでくれたからいいんだ」


「……聖、そんなことがあったんだね」


鈴恵さん。
私、今ならわかるんだ。


聖を可哀想だなんて思わない。


だって、聖は今を生きているんだから。


「聖のお母さんは縁を切ってまで、聖を産みたかったんだね」


「………………」


「あれ、聖って今一人暮らしだっけ」


「うん、そう」


「そっか」


「だから、今度家においでよ」


「えっ?」


「付き合ってなくても家に来るぐらいならありっしょ」


「…………行きません」


「固いな、いずちゃんは」



それから聖は、はははっと笑う。


聖の陰を、見た気がした。
何か闇を持っているのかもしれない。

でも、それは。


私が踏み入れたらいけない領域だと思う。
だから聞かない。

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