レンタル彼氏【完全版】
二人で新作のケーキとパフェを食べて、ファミレスを後にした。


さりげなく、聖は会計をしてくれる。
出し方がスマートで、慣れてるなあと思ってしまう。

まあ、この見た目だから当たり前なんだろうけど。

「ごちそうさま」


「え?あ、いーよ、男が出すもんじゃない?」


「ふふ、優しーよね、聖」


「惚れた?」


「はは、ない」


「ちぇっ」


「あははは」

それから聖はこれからバイトがあるから、私とは反対方向に向かおうとした。


歩きだす前に私をじっと見つめて。

「送ってあげらんなくてごめんね、気を付けてね!
じゃあ、またっ」

そう言って、笑顔を残して走って行った。


時計を見ると、もう十時になりそうだ。
………これ、時間ギリギリじゃないの?



…………はあ、いいのに。
私との約束なんかよりバイト優先してくれたらいいのに。


だけど、聖の気持ちが嬉しくないと言えば嘘になる。

尚子がいないから、きっと一緒にいてくれたことぐらい、私はもうわかる。


いつまでも鈍いわけじゃない。
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