レンタル彼氏【完全版】
「…まじ迷惑なんだけど」

全く笑ってない顔で伊織が言うけど。


「迷惑上等!それが怖くて記者がつとまるか!」



私がガッツすると、伊織は諦めたのか大きな溜め息をつく。



「……勘弁して」


「伊織さん、私しつこいですから」


再度、大きな溜め息をつくと伊織は頬杖をついて外を見た。
それから、目線だけをこちらに寄越すと話しだす。


「…………あの、さ」


「はい?」


「………じゃー俺と対等に話してくんない?」


「…え?」


「敬語もやめていーし、伊織でいーから」


突然の提案に目を白黒させるしか出来ない私。



「…俺のこっち側知ってる奴少ないから」


微かに笑う伊織。
それを聞いて、胸が締め付けられそうになった。


彼はどうしてレンタル彼氏なんかで働き始めたんだろう。

どうして?



まだ16歳で。
平凡だけど幸せな家庭に育った私には到底わからないことで。




彼が少しでも心を許してくれたのかもしれない。
そう、思ったら嬉しくなった。
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