レンタル彼氏【完全版】
それから俺の目の前に、小さな箱を出す。


「………これ、何?」


「……………いーから開けなさい」


「………」


わけがわからず、その箱を受け取って開ける。
中に入っていたのは、いちごの乗ったショートケーキだった。


「……ケーキ?」


何でケーキ?
わかんないんだけど。

美佳はまた大きく溜め息をつく。

それから俺を見ると、目を細めて笑った。


「伊織、誕生日おめでとう」


「……………………」


………また、忘れてた。
自分の誕生日なんて興味なかったし…。


「毎年、ちゃんと覚えてたんだけどいつも祝えなかったからさ。
だから、今年こそはと思って。

…ごめんね、ケーキしかなくて」


ううん、と言いながら俺は首を振る。
……嬉しいに決まってんじゃん。


毎年毎年。

俺は忘れてるのに、美佳だったり、鈴恵さんだったりが思い出させてくれる。


美佳がいない時は、鈴恵さんとたんぽぽ院の皆が祝ってくれた。



鈴恵さんのあまり遅くならないようにね。は、きっと早く帰っておいでなんだ。
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