レンタル彼氏【完全版】
聖が俺の誕生日を知ってるかは知らないけど、今日は早く切り上げないと。


きっと、鈴恵さんは起きてる。
皆が寝ちゃっても鈴恵さんはきっと。


「これだけ渡したら満足だから」


「美佳…」


「なに?」


「………ありがとう」


「ふふ、なんか伊織素直になった?」


「………いや、嬉しかったから」


「あははっ、誕生日来るの私も嬉しいんだよ」


「え?」


「伊織を産んでくれてありがとうって毎年、この日になると思うんだ」


「…………」


「伊織が、今を生きてる意味ちゃんとあるから」


美佳の、言葉。
何でこんなに沁み渡るんだろう。


多分。


あの、事件を知ってる唯一の人だからだ。


偽りない言葉だからだ。


美佳は俺を理解した上で大事に思ってくれてる。
それがわかるから。


美佳に、まだ時間あるかと聞かれたから、聖とは八時の予定だと伝えた。


「じゃあ、どっか行こうよ」

そう、言って俺は時間まで美佳と過ごした。




その間。

聖は泉を家に連れ込んでいたことなんて知らずに。
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