レンタル彼氏【完全版】
コトンと聖がコップを俺の目の前に置いた。

「ありがと」


「飲もうぜっ」

聖は俺のコップに並々と日本酒を注いだ。


「わりぃな、なんかつまみでも買って来たらよかったな」


「いやいや~あ、今何か買って来るよ、俺」


「え?!」


「近くにコンビニあるし」


「いや、俺行くよ!」

つか、二人きりになるのはまずい!
無理、だ。


「お客さんに行かせることなんか出来るかよ!俺行くよっ!
てか、甘いもん買いたかったんだよね~伊織、わからないっしょ」


「………じゃあ、頼む」


「らじゃっ」


聖は立ち上がると、薄手のパーカーを羽織った。
それから行ってくると言いながら、玄関の扉を開けて出かけて行った。



……………。


また、鼓動が早くなる。
緊張が俺を支配する。



……触れられる距離に。



泉がいるんだ。



ドクドクと早鐘のように鳴る心臓を抑えながら。
俺は、少しずつベッドに近付いた。





………見なければ、いいのに。
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