レンタル彼氏【完全版】
暫く、そこで寝てから俺はたんぽぽ院へ向かった。


胸が、苦しい。
会えなかった時よりも何倍も何倍も苦しい。


「…ただいま」


足が重い。
もう、早くベッドに寝転がりたい。

何も考えたくない。


ふらふらと、部屋まで真っ直ぐ向かう。



シンとしてるから、皆寝てるんだろう。
夜でよかった。

平然を装って、皆の相手する自信がなかった。


部屋に入ろうとすると、後ろから声がかかる。


「伊織?」


鈴恵さん…?

「……………ただいま」


「帰っていたの?」


「今、帰って来た」


「そう、あ、ちょっと待っててね」


そう言いながら鈴恵さんはパタパタと、自分の部屋に入るとすぐに出て来た。
その手には大きな包み。


ああ、そうか。


俺、誕生日だったんだ。


「はい、誕生日おめでとう」


「……ありがとう…」


綺麗にラッピングされている包みを受け取る。

それを丁寧に開いてゆく。
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