レンタル彼氏【完全版】
「座って~、あ、伊織紅茶でいい?」


「何でもいいよ」


「りょうかーい」

ガチャガチャと、グラスにパックの紅茶を注いで俺に出した。
自分の分もテーブルに置くと、腰をおろす。


「…………聞きたかったこと、なんだけど」


「ああ、言ってたな、何?」


「……美佳は今、どこにいるかわかる?」


「美佳?」


何で、美佳?
それでやっと思い出す。

聖に会いたいと言っていた美佳のことを。


「聖に会いたいって言ってたよ」


「連絡取ってんの?!」


ぐいっと身を乗り出して聖は言った。
後ろに少し後退りしながら、頷く。


「………………そか」



…………どうしたんだ?


聖の考えてることが全くわからなくて、聖を見つめる。
俯いた聖の表情はわからない。

だけど、強く歯を食い縛っていた。




いつもと何かが違う。



普段の聖とは違う表情に、俺は心配になって聖の名前を呼ぶ。



「………聖…?」
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