レンタル彼氏【完全版】
「…………何で」


「え?」


「……………美佳は何で伊織と連絡取ってんの?」


「……………」



聖の目付きが恐ろしく鋭い。
一瞬にして部屋の空気が張り詰めた。


「……美佳に会わせて」


「…ああ、大丈夫…だけど、どうしたんだよ」


「………………うるせえっっ」


「え?」


その言葉が自分に向けられてると理解するのに少し時間がいった。


聖は急に笑いだすと、ガンっとテーブルを両手で打ち付けた。

その弾みでグラスが倒れる。



「…………伊織さ」


「…………」

静寂が、酷く恐ろしい。
静かな部屋で、ポタポタと紅茶がテーブルから滴り落ちる音が自棄に耳につく。


「泉のこと、好きなんでしょ?」


「はっ?!」


突然、聖は何を言いだすんだ?

俺が泉を好きなことを、聖は知らないはずだ。


「俺、伊織が泉を好きなこと知ってたよ」


「……は?」


「……知ってて近付いたんだから」


「…っ?!」



横目で俺をちらっと見る瞳に感情がこめられていなかった。

その瞳を真っ直ぐ見つめる。
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