レンタル彼氏【完全版】
膝から崩れ落ちた聖に、俺は何も言えなくて。
静かに玄関まで歩いた。
靴を履いて、玄関のドアノブに手をかける。
それから、ゆっくりと聖の方を振り返った。
聖は、まだ崩れ落ちたまま。
そんな聖に。
一言。
「……俺は、聖を友達だと思ってるよ」
これは紛れもない、真実。
だって、嬉しかったんだ。
聖から連絡貰った時。
聖は何も反応を示さなかったから、聞こえたのか、それは分からない。
それ以上声をかけることなく、俺は聖のマンションを出た。
バイクに乗って。
俺は、たんぽぽ院まで真っ直ぐ帰宅した。
それから鈴恵さんを探す。
鈴恵さんはいつもの様に、洗濯を畳んでいた。
その、変わらない光景がただ嬉しかった。
もしも。
俺に生きる意味があるのなら。
鈴恵さんと美佳の為ではなくて。
この、悲痛な運命を背負うことなのかもしれない。