レンタル彼氏【完全版】
「…一つ、聞きたいんだがどうして最初に彼女に連絡をしたんだい?」


「……美佳ですか?」


「ああ、救急車とは考えなかったのかね?」


「…………もう、力も入らないし…死ぬかもと思ったんで………せめて最後は好きな人の声を聞きたかったんです」


「………そうか…辛かったね…」


俯いて、涙を目に溜める俺を刑事は見つめた。
それから、何も言わず軽く礼をして病室を後にした。


その後すぐに医師と美佳が病室に入って来た。
色々、検査をしてもらったり、美佳の話を聞いたり。


…………まさか、これだけで俺への疑惑が解かれるなんて思ってなかった。


目撃者はいないし、俺だって怪しいのは間違いない。
真実を織り交ぜてはいたが、嘘ばかりついた証言。


だけど、父親が逃げるところを目撃した人がいたり。
余りにも深い刺し傷に、自分では不可能だろうと医師が刑事に言ったり。


極めつけは、事情聴取をされていたあの男が、刑事を殴ったことだった。



傷害と、殺人、殺人未遂で逮捕されたのだった。


父親は最後の最後まで俺が犯人だと無実を訴えたけど、暴れ回った父親の言葉など誰も信じずそのまま刑務所に入ることになった。
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