レンタル彼氏【完全版】
………こんな呆気なく、捕まるとは俺も思っていなかった。




…………それが、美佳のお陰だとも。




後遺症もなく、俺は退院を迎えた。
退院する俺を、美佳が出迎えた。


「………伊織、退院おめでと」


「…ありがとう」


ふふっと笑い合うと、美佳が用意したタクシーに乗り込んだ。
若干の痛みはあるものの、普通に動けるし、不自由はなかった。


タクシーの中で美佳が前を向いたまま俺に問いかけた。



「……これからどうするの?」


「どうするって?」


「だって、両親いないし、お店はもう無理でしょ?」


「………まあ、うん」


こんなにもすんなり行くと思ってなかった俺は、うまくいった後のプランを考えていなかった。

また、たんぽぽ院に戻るしかないのだろうか…。


一年も経っていないのに。





そう思う俺に、美佳がある提案を出した。


「うちに来なよ、伊織」


「………美佳の家…?」


「うんっ」


前を向いていた美佳が、俺の方をくるっと振り向き、ニッコリと微笑んだ。
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