レンタル彼氏【完全版】
佐々木は俯いた顔を上げて、えっと顔をする。
声に出したのかはわからなかった。


「伊織、いい男でしょ」


「…………はい」


佐々木は曖昧に頷く。
なんだ、その美佳に言わされた感じ、苛つくな。

別に自分がいい男だなんて思ってるわけじゃないけど。


「…佐々木はモテなさそうだな」


思うよりも先に言葉に出てしまい、しまったと口を塞ぐがもう手遅れだった。


「こら、伊織。佐々木君は見た目じゃないの、中身なの」


「………………」


中身?
なよなよしてる感じなのに。

めちゃくちゃ性格いいとか?


黙ったまま、しらっとした目で佐々木を見る。
佐々木は目も合わせずに小さくなっていた。


「美佳さん、いいです、大丈夫です」


「もう、佐々木君も言わないとダメだよ」


「………いえ、わかってますから」


「何をー?わかってますって」


美佳がぷりぷりと怒り出した時、エレベーターの扉が開いた。

目的の階に到着したらしい。


しょうがなく美佳は口を噤みヒールをカツカツと鳴らしながらエレベーターを降りた。
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