レンタル彼氏【完全版】
それから気まずい空気が流れたまま、事務所だと言っていた部屋の前まで来る。

佐々木が先頭までぱたぱたと走って来ると、鍵を開けた。


ゆっくりと扉を開いた。
佐々木、美佳に続き、俺も中に足を踏み入れた。

そこは、普通のマンションにしか見えなかった。


玄関も。

廊下を歩いて、突き当たりの部屋が多分リビングなんだろう。
それまでにトイレや、シャワールームがある。



……生活感は確かにないけれど。


キョロキョロ辺りを見渡しながら俺は二人についてゆく。



廊下を歩いた突き当たりの部屋で待っていたのは…。



――――…社長だった。




これが俺と社長の初めての出会い。




三人の顔を確認すると、眉間にしわを寄せていた男はふわっと笑った。

「おお、来たか」


「社長、おはようございます」


「ああ、そこに座って」


「うん」


そう言うと美佳はリビングにあるソファに腰をおろした。
広々としたリビングには真っ黒な机と、ソファと、ソファの前にある小さなテーブルのみ。



一言で言うなら殺風景だった。

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