レンタル彼氏【完全版】
「その様子…ついに泉も恋わずらいか?」


キャッキャッと、楽しそうに私の顔を覗きこむ。

きっと、思い切り酷い顔をしてる。
目は腫れてるわ、クマあるわ。



こんなんじゃ相手にされなくて当たり前だ。



「そんなんじゃないよ…」



そう、伊織に恋なんかしてない。
あの人は嵐みたいなんだ。


いきなり現れて、嫌な奴かと思えば素直に謝ったりして。

掴めない。



雲の上の人だった。
だけど。



彼の連絡先がこの携帯に入っている。


それだけで、この携帯を肌身離さず持っているのは。


なんなんだろうか…。



「泉のそんな顔見るの、中学の川田先輩の時以来だよ」


「のっ、和」


「あー川田先輩はまだ禁句か」


「…そんなに酷いかな、私」


「うん、生気ないね」


「……」
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