レンタル彼氏【完全版】
戻って来た鈴恵さんは、私に真っ白な封筒を差し出した。

それを見上げて首を傾げる。



「これ、伊織の今住んでいるアパートの住所よ」


「…えっ」




私は震える手をゆっくりと伸ばして、その封筒を手に取った。





ここに、伊織の、住所…?



「必ず、会ってあげて」



鈴恵さんの真面目な口調に、封筒から視線を鈴恵さんにうつす。



「伊織はね、愛情を知らないの。わからないの。
そんな伊織を泉さんになら任せられるわ。
ああ見えて伊織は凄く弱いから」


「……っ、はいっ」



知ってる。
伊織が弱いこと、知ってる。


何度も何度も後悔したから。



「…それで会えたなら…伊織を絶対手放さないであげて」


「………っ」




手放したり、するもんか。

離れたいと言ったって。




私が絶対離れてあげないんだから。


ずっとずっといてやるんだから。




声にならない声をだしながら、私は鈴恵さんの言葉に何度も何度も頷いた。



「伊織にも幸せになる権利はあると、教えてあげて」


「………はいっ」



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