レンタル彼氏【完全版】
礼儀正しく、その店員は丁寧に商品を取り出すと

「128万です」


そう言った。



カバンから俺は札束をぽんと二つ出す。

それに少し店員は目を見張ると、すぐにそのお金を持って裏へと向かった。




…………何だ、この感覚。

気持ちいい。


お金を出す感覚が気持ちよかった。




それから俺は別の店に行ってまた色々買った。

三百万しか持って来なかったことを悔やんだ。




その日を境に俺は、洋服にバッグ、アクセサリー。

様々なモノを買い漁った。


値段は見ない。

金ならあった。



給料日や、翌日は吏紀と買い物に向かう。

高価なモノばかりが俺のクローゼットを埋め尽くして行った。




そんな、ある日だった。





いつものように吏紀と買い物に行っていた時だった。


買い物袋はぶら下げて歩いたりなんかしない。
いつも配送にしている。


金ならあるのだから。




手ぶらで歩く俺と吏紀に一人の男が声をかけた。



「お兄さん、いいの仕入れてるから買ってかない?」


最初、俺は意味がわからなかった。
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