レンタル彼氏【完全版】
そんな苦い思い出に呆けてると、突然携帯が鳴りだして思わず体がビクッとする。


「ちょっと泉、マナーにしとかないと没収されんぞ」


和のごもっともな忠告が、耳を通り抜けたのは。

きっと、伊織からきたこのメールの所為。



【泉、今日ひまあ?】




たった、こんな一言でこうも私を浮き上がらせるんだから…伊織は凄い。



「おーい、泉ー」


「あ、え?」

和の呼び掛けに慌てて返事をする。

「本当にっ、今日はどーした?放課後、マックでも行く?」


放課後?


「あ、今日、今日はダメなんだ」


「え、まじ?なんかあんの?」


「あ、うん、今日は外食だとかなんとからしーから早く帰ってこいって」


「ふーん、外食かあ。羨ましいなあ」


「えへへ…」


そこでチャイムが鳴って、和が私の少し前にある自分の席に慌てて向かった。


私は

【暇!】

とだけ、伊織に返して携帯をスカートのポケットにしまった。
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