レンタル彼氏【完全版】
その後ろから、いつ入って来たのか、社長が俺を見下ろしていた。



「ごめんっ」


ひたすら泣きながら謝る美佳。

その美佳の肩を社長が掴むと、後ろへとやった。
そして社長が俺の横に来る。



「……吏紀とドラッグやってたそうだな?」


「……………」


「吏紀はもうレンタル彼氏をやめて貰った」


「はっ?!」


「もう、いない」



そうやって笑う社長の顔に背筋が凍った。


…………いない?


いないって…ただ、いなくなっただけ、だよな?



「…会える、よな?」


「もう、いないから会えるわけないだろう」


「…まさか、“消した”のかよ………?」


「はは、いっちょまえな言い方するな」



愉快そうに社長は笑う。

何も。


何も面白くない。



「じゃあ、俺も消すのかよ?!」


そうやって叫ぶと、社長はぴたりと笑うのをやめて俺を無表情で見下ろした。




「…いや、伊織は売り上げいいから消さない」


「…じゃあ、どうするつもりだよ?」


「ここで暫くドラッグを抜きなさい」


「っ?!」
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