レンタル彼氏【完全版】
「逃げるなんて考えるなよ?」



俺を見て不気味ににやっと笑う。
どうしてこうも社長は威圧感があるのだろう。


「どれだけ逃げても、お前はもう逃げられない」


「…………は?」



社長は自分の首の後ろを人差し指でトントンと指す。


「ここにはチップが埋め込まれている。
だから伊織の場所なんか、いつでもわかるんだ」


「………………」


「吏紀も逃げ出したみたいだったがな」


くくくっと喉を鳴らしながら笑うと、社長は何も言わず病室を後にした。



「……………まじ、かよ」



あの、傷は。

あれはチップを埋め込む為だったんだ。



俺達を逃がさない為に。





稼ぎ手の俺達を逃さない為に。



「………伊織、ごめんね…」


美佳の言葉も、今の俺には何も響かなかった。




俺は。





本当に自由を失ってしまったんだ。




逃げることなんて出来るわけなくて。


俺の未来は、元から明るかったわけじゃないが、これで本当に真っ暗になった。


非の打ち所がないほどに。
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