レンタル彼氏【完全版】
「……………」



そう、言った聖は黙って俯いていた。


何か様子がおかしい…?



「聖、どうかした?」



いつもの聖と違うことに気付いた私がそう尋ねる。

聖はハッとすると、首を左右に思い切り振った。



「何でもないよ」


「……そう?おかしいの、聖」


「はは、そう?」



私が笑うと、それに聖も一緒に笑った。




「お待たせいたしました」と店員に渡されたテイクアウトしたケーキの包みを受け取ると


「行こうか」


聖がそう言って、私と聖は店を後にした。





カフェを出た後、私はカバンからあの封筒を取り出す。


その住所を聖に見せる。
聖はメモを見ると、頷きながら。


「あー、こっちだね」

そう言いながら指を指した。


地図にうとい私は聖のナビに後ろからついて行った。


場所は意外と近かった。


だけど、駅の反対側だったから普段私は行かない。



地元でも、駅の反対側はあまり足を踏み入れなかったりする。


やっぱり、行き慣れた場所についいつも通ってしまうからだった。
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