レンタル彼氏【完全版】
「どうした?大丈夫…?」


その問いに、何度も私は首を縦に振った。

緊張してうまく、話せなさそうだったから。



「…行こう」


私の腕を取ると、聖は伊織の部屋がある二階へと向かった。



階段をカンカンと、音を立てながら上がって行く。



一番、奥の部屋が伊織の部屋らしい。



私と聖は伊織の部屋の前に立った。


玄関の扉を見て、私は固まったまま動けずにいた。
そんな私を見て、聖はインターホンに手を伸ばした。



「…………押すよ?」


「…、わ、私が押す」



……私が、押さないと。



聖は何も言わず、小さく息をつくと後ろに下がった。



一歩、前に足を踏み出した私はゆっくりと腕を上げる。


震えている手で、ゆっくりゆっくり。





インターホンを押した。





ピンポーン






ドキッ!!

心臓がぎゅっと萎縮する。

自分でインターホンを押したくせに、その音に驚くなんて、どんだけ緊張してんの。



しっかり、しろ!


泉、しっかりしろ!




……………………?
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