レンタル彼氏【完全版】
もう一度インターホンを押す。



だけど、誰も出なかった。



「…………留守…?」


「……かもね」




…ああ、安心なのか、ほっとしたのか。

肩の力が抜けた私は、へなへなとその場にしゃがみこんだ。




「…ちょ、大丈夫?」


「………大丈夫…」




そう、笑って答えていたら。






ガチャリ






目の前の扉が開いた。






「……はい、誰です…か……」



ガチャリと、扉を開けた人物は私と聖を見て目を真ん丸にしている。



寝てたのか、スウェット姿をしていたその人。






…………紛れもなく……。








………私が会いたいと焦がれた伊織だった。






「…は?………は?
な、ど、どういう、こと」



伊織は寝起きもあり、更に頭が回らないのか、途切れ途切れに声を出す。



「……い、伊織っ」








もう、何も考えられなかった。






私は体を起こすと、そのまま伊織に抱きついた。






…………久しぶりに抱きしめた伊織の温もり。香り。





何も、変わらない。
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