レンタル彼氏【完全版】
説明しなきゃと、伊織から少し離れると


「あ、のっねっ、たんぽぽっいん、で、働く、ことになってねっ」


嗚咽をこらえながら私は必死に説明をした。



「…え、働くって?」


「…たんぽぽ、院で、来年から、働くの」


「………嘘…」




伊織は信じられないのか、髪の毛をくしゃっと握る。



「………あーあ」


そんな私と伊織を見て、聖がぼそっと呟く。



そんな聖を二人して見ると、聖は切なそうに眉を下げて笑った。




「……今日さ、俺本当は伊織に泉ちょうだいって言いたかったんだ」


「…え?」



突然の聖の言葉に、固まりながら見る。




「…泉は知らなかったよな。
俺、まじで泉のこと好きだったんだよ」


「…嘘っ、し、知ら、なかっ、た…」



泣きながら、私は言う。

聖はそんな私を見て、ふっと笑う。



「…知ってたよ。
泉が全く気付いてないの。
いつか、このまま伊織と会わなければ俺のこと好きになるんじゃないかなって。

…少し期待しただけ」


「……ひ、じり」


「あー、でも、もーいい」



聖は笑いながら、手を左右にぷらぷらと振る。
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