レンタル彼氏【完全版】
伊織は曖昧に微笑むと、しっかりと私の瞳を見る。




「…泉、なんだよな?」



戸惑いながら。

ゆらゆらと、瞳を揺らしながら。

確認するように伊織は言った。



「…………うん、泉だ、よ」



手で顔を隠してるから、くぐもった声になりながらも私はそう答えた。




「………ねえ」


「…何?」


「…………抱きしめて、いい?」


「……………………う、ん」




その瞬間。



伊織の顔は歪んで、私は強く強く抱きしめられていた。





きつく、抱きしめられて少し苦しい。


だけど、それがとてつもなく…幸せ。





「……………っ、会いたかった……泉っ」




擦れた声で伊織が私の耳元でそう、言った。




「…私も、会いたかった」


顔を覆っていた手を震える伊織の背中に回して、私はスウェットをぎゅっと掴んだ。




「………伊織、ずっと、ずっと、ずっと………好きだった。
ずっと、ずっと言いたかった、伊織が、好き。
好き、どうしようもなく」


「………っっ」




伊織が小刻みに震える。

泣いて、いるの?
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