レンタル彼氏【完全版】

「………俺も、泉が、好きだっ」


「っ！！」




また、涙がぼろぼろと流れ落ちる。






暫く、私と伊織は抱きしめあっていた。



それから、伊織がゆっくり体を私から離した。




情けなく微笑む、その顔も。


昔のまんま。



「……風邪、引くな。中入ろう？」


「…………」


私が頷くと、伊織は私の手を握って伊織の部屋へと向かった。



伊織の部屋は、何もなかった。



ただ、布団と着替えが部屋にあるだけ。


テレビも、パソコンとか、音楽機器も何もない。



「……適当に座って」


「うん」


伊織が座った場所から、少し離れた場所に座る。



「………ふふ」



座った私を見て伊織が静かに笑った。



「え、な、何？」


「……ううん、泉、おいで？」


「っ！」




伊織は両手を広げて、私を呼んだ。



「……っ」



どうしようか、悩みながらも私はゆっくりと伊織に近付く。


「…失礼します」



そう、断ってから伊織の腕に抱きしめられようとすると伊織が大爆笑した。



意味がわからなくて私は伊織を真っ直ぐ見る。