レンタル彼氏【完全版】
「あ、えーと、うん」


彼氏。
名だけの。


本当は全くの他人。



「…そ。そっか、何デート?気を付けてけよ」


「え?あ、うん」


やっぱりどこかおかしい順二を不思議に思った。
だけど、それを追及しなかったのは早く伊織と会いたかったからだ。


順二はじゃあ、と言いながら教室を後にした。


私はまた明日、とだけ順二の後ろ姿に告げると、メールの返信に夢中になった。



【今、まだ学校!】



あー私もかなりの短文だな。
でも、これしか書けないもんな。



特にいじらずそのまま送信する。

すぐさま鳴る携帯。
それは伊織からの着信だった。


…ちゃ、着信!?
ドキドキする胸を抑えて、私は大きく息をつく。
それから緊張した手で通話ボタンを押した。



「もしもーし」


一日ぶりの伊織の声。
こんな、低かったっけ。
< 68 / 813 >

この作品をシェア

pagetop