レンタル彼氏【完全版】
「夢じゃないよ、私はいるよ」


「うん…、ごめん」


耳元で、消え去りそうな声を出して伊織は言った。

苦しいよ、伊織。


「まさか、もういるだなんて思ってなかった」


少し体を離して、伊織は私を見る。
優しい瞳。


「…嬉しい」


こんなに伊織は感情をストレートに出したっけ?


「私も嬉しいよ」


「もう、手放さないから」


「うん、わかってる」


「…好きだよ」


「うん、私も」



伊織は私に顔を近付けると、ゆっくりと唇に重ねる。


軽いリップ音がした後、伊織はふふっと笑った。


「少し、性急だったな」


「何が?」


「キスしたら、それだけで終われなくなる」


「…は!?」


不敵に笑った伊織は、私を布団にどさっと押し倒した。



「え?え!?」


現状があまり理解できていない私は、目をパチパチとさせる。

そんな私を見て、伊織はまた優しく微笑む。



「俺、久しぶりだわ」


「え?」


「レンタル彼氏を辞めてから泉以外、抱く気になれなかった」


「…………」



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