レンタル彼氏【完全版】
それから私は自転車で駅前までかっ飛ばした。

着いた時にはほんのり汗をかくぐらい、私は自転車を漕いでいた。


こないだのファーストフード店の前に自転車を止めて、私はガラス張りの店内をちらりと見る。



放課後。
この時間帯はいつだってファーストフードは混雑してて。

和だって簡単には見つけらんないのに。


伊織は本当にすぐに見つけられる。


伊織の周りだけ、光を浴びてるような、照らされてるような、そんな感覚に陥る。



ぼーっと伊織を見ていると女子高生二人組が、伊織に近付いて話しかけていた。
伊織は愛想笑いを浮かべながら、二人の相手をしている。



私は伊織が取られてしまうかのような感覚になって、慌てて店内に入った。
彼氏じゃないけど、彼氏の浮気を心配するような、そんな気分。



「伊織っ!」


私は女子高生との会話を遮って、伊織を呼んだ。


「あ、泉。
ね、彼女と待ち合わせだからごめんね」


ニコニコと笑顔を作って、伊織は二人にちゃんと“彼女”と公言してくれた。
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