レンタル彼氏【完全版】
泉から香るシャンプーの匂いが、俺の胸を高鳴らせた。



「…泉、久しぶりに、いい?」



聞くなんて、愚問。

そう、思ったのは確か。
だけど、聞かないわけにはいかない。


それだけの年月離れていたのだから。




「……うん」


顔が見えないから、どんな表情をしてるかはわからない。

きっと、真っ赤かもしれない。




「……泉」



ぎゅうっと、後ろから泉を強く強く抱きしめる。

泉もその腕にしがみ付く。



泉の首元に顔を埋めようとした時、泉がおもむろに話しだした。




「………初めてを、さ」


「…え?」


「私の初めてを伊織に捧げたでしょ?
あの時、終わってから暫く何も出来なかったんだ」




その言葉を聞いて、泉との初めてを思い出す。

何度も、初めてなのにいいのかと聞いた。
ただの意地でないかと思っていた。



だけど、泉は俺を受け入れた。


あの後のことは、契約破棄をしたことぐらいしか覚えていない。

あの時、既に泉から離れた方がいいと危険信号を感じとっていたから。



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